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データ活用の成熟度を高めるためのロードマップ

戦略   |   Alteryx   |   2025年1月31日 読了時間の目安:7
読了時間の目安:7

これまで、データを活用できる体制を整えることは、多くの企業にとって理想的な目標でした。しかし今では、どんな企業においても事業戦略の中心的な課題となっています。データを適切に収集・管理・分析し、意思決定に活かせるかどうかは、業務の効率化だけでなく、収益の向上や競争力の強化にも直結します。

データ活用の成熟度を意識的に高めていくことで、より的確な意思決定を行い、変化にも柔軟に対応できるようになります。データ活用の能力をビジネス目標と結びつけ、データ主導のイノベーション文化を醸成することで、組織は膨大な情報を価値ある資産へと変え、成功への道を切り拓けるようになります。

その重要性を裏付けるデータを以下にご紹介します。

  • Heapの調査によると、データ活用の成熟度が高い企業は、そうでない企業と比べて約2.5倍のビジネス成果を上げている。
  • Forbesによれば、データ活用の成熟度が高い企業は15〜25%の収益成長を短期間で達成する可能性が高い。
  • Gartnerの調査では、データ活用の成熟度が低い企業は、低品質なデータから生じる問題によって年間約1,280万ドルの損失を被っていると推定。(出典:TCS社レポート

本ブログ記事では、企業がどのようにデータ活用の成熟度を高め、ビジネスの成功につなげているのか、またその過程で直面する主な課題について掘り下げます。さらに、North Labs社のCEOであるCollin Graves氏の実際の経験を交え、データ活用の成熟度を向上させ、データへの信頼を築くためのポイントをご紹介します。Graves氏には、先日Alteryxのポッドキャスト「Alter Everything」にご出演いただき、企業のリーダーや現場の担当者がデータ活用を促進し、信頼できるデータ環境を構築するための具体的な支援方法についてお話しいただきました。

データ活用の成熟度とは?

自社のデータ活用はどれくらい進んでいますか?データを活用して、より的確な意思決定を行い、業務を改善し、市場の変化を先読みできる状況ですか?その答えから、自社のデータ活用の成熟度がわかるかもしれません。

データ活用が進んでいる企業では、効率的なシステムと信頼できるデータ管理体制が確立されており、データに基づく意思決定が日常的に行われています。一方で、皆さんがもし「自社のデータ管理に一貫性がなく、整理されていない」と感じているなら、まだ成熟曲線の初期段階にいるのかもしれません。あるいは、すでに予測分析などの高度なツールを導入し、データを経営の重要な資産として活用し始めているなら、データ活用の成熟度が高い企業と言えるでしょう。

なぜデータ活用の成熟度が重要なのでしょうか?データを大量に扱う企業にとって、データ活用の成熟度は競争力を左右する重要な要素です。活用の仕方によっては、競争力を強化する武器にもなれば、逆にリスクを生む要因にもなります。その理由を見ていきましょう。

  • データ活用の成熟度が高まるほどに、よりスピーディーにトレンドを分析し、インサイトを発掘し、スマートで的確な意思決定を行えるようになる。
  • データ活用が進んだ組織は、ワークフローの自動化やリソースの最適化を実現し、複雑な業務に煩わされることなく、時間とコストを削減している。
  • データ活用の成熟度が高い企業は、イノベーションを生み出すだけでなく、市場の変化を見越し、いちはやく対応している。

データへの信頼は、データ活用の成熟度を高める取り組みにどのような影響を与えるのでしょうか?非常に重要なポイントですが、データ活用の成熟度向上には、何よりも信頼が欠かせないことを常に意識しましょう。社内の人々が、データの正確性・完全性・信頼性に確信を持てなければ、重要な意思決定の際にデータを活用しなくなってしまうでしょう。そのため、正確で質の高いデータや、明確なガバナンスなど、しっかりとしたデータ管理の仕組みを整え、データへの信頼を築くことが必要不可欠なのです。

組織内でデータへの信頼を素早く、効率的に築くことが欠かせないと考えるGraves氏は、次のように語ります。「今は、これまで以上に多くのデータが存在し、それを生み出すシステムも増え続けています。意思決定や自動化、業務の最適化のためにデータを活用したいというニーズも、これまでになく高まっています」

「しかし、多くの企業はデータ活用の成熟度を高めるために、どこから手をつければよいのか分からずにいます。そして、データへの信頼が損なわれていくケースを度々目にします。データが整理されていない、適切に統合されていない、ビジネス上の価値を十分に生み出せていないなどの問題で、データを活用するモチベーションが下がってしまうのです。データ活用を進化させるうえでカギとなるのは、信頼のレベルをどのように引き上げるかという点です。組織の誰もがデータを安心して活用できる環境をどう整えるかが重要です

データ活用の成熟度を高めるための戦略

データ活用の成熟度を高めるために、組織はどのような戦略を取り入れられるのでしょうか。まず有効なのが、四半期ごとに具体的な成果を出すことを目指すアプローチです。「数週間といった短期間では十分な進展が見込めず、一方で数年単位の取り組みになると、方向性が曖昧になりがちです。この四半期ごとの進め方は、そのちょうどよいバランスを取ることができます」と、Graves氏。また、このアプローチを採用することで、要件が変更されたとしても、影響を最小限に抑えやすくなるというメリットもあります。

もう一つの効果的な戦略は、データの広範なメリットを強調するのではなく、具体的な成果に焦点を当てることです。データに懐疑的な人も少なくないため、リーダーやアナリストには、データがビジネスにもたらす具体的な価値を示し続け、データの価値が時間とともに積み重なっていくことを伝えましょう。

Graves氏は、次のような例を挙げて説明します。「例えば、あるメーカーの廃棄率が20%で、業界平均が14%であることがデータから明らかになったとします。では、廃棄が発生している原因を特定し、その差を半減できたらどうでしょうか?さらに、それによって年間1,200万ドルの利益を確保できるとしたら?このようにデータを活用することで、ビジネス上のインパクトを明確に伝えられるようになります」

こうした取り組みにおいて、リーダーはどう行動すべきなのでしょうか。組織のデータ活用の成熟度を高めるには、チーム全体での取り組みが欠かせません。そのためには、リーダーの明確なコミットメントと、リーダーとアナリストの継続的な対話が重要になります。以下に、リーダーが成功への道を切り拓くための2つの方法をご紹介します。

  1. 小さく始め、価値を優先順位付けする:Graves氏は、まず改善すべき最も重要なポイントを一つ選ぶことを勧めます。「おそらく10~20個の改善点が思い浮かぶでしょう。それらをすべてホワイトボードに書き出し、じっくり考えてみてください。そして、どれがビジネスに最も大きな価値をもたらすのかを優先順位付けし、その一つに集中的に取り組むのです」
  2. 妥協しない:将来の業務負荷に耐えうる強固な基盤を築くことが重要です。そのためには、Alteryxのようなツールを活用し、焦らず丁寧に土台を整えること。「何年もの間、多くの企業を支援してきましたが、『しっかりした基盤が必要なのは分かっているが、とりあえず手っ取り早く使えるものが欲しい』と考えるところが非常に多い」と、Graves氏。短期的な視点にとらわれ、その場しのぎの対策に走らないようにしましょう。

データを正しく整えれば、すべてがスムーズに

データ活用の成熟度を高めるには、継続的かつ長期的な取り組みが欠かせません。それには労力も覚悟も必要です。では、その先に待っているものは何でしょうか?Graves氏は、その成果はすでに多くの企業で証明されていると語ります。「データを活用する企業は、利益を上げる確率が高くなります。業界内で競合を上回る成長を遂げる可能性も高まりますし、従業員の定着率も向上します。また、データを活用すれば業務を最適化できるチャンスが無数に広がります」

つまり、最も強力なツールを活用し、競争力を高めていくことだとGraves氏は続けます。「もはや、表計算ソフトと勘だけで企業を成長させる時代ではありません。ビジネスがますます複雑になっている今、データを活用する以外に選択肢はないのです」。データを駆使し、リアルタイムで状況を把握して柔軟に対応できる企業は、サプライチェーンやマーケティング戦略など、あらゆる面でより効果的な経営を実現できます。

Graves氏によれば、「データ活用の成熟度を順調に高められている」と断言する企業はほとんどいないそうです。それだけ難しい取り組みであることは間違いありません。Graves氏は次のようにアドバイスを送ります。「まずは小さく始めること。そして、クラウドの柔軟性を活かしながら、試行を重ねて素早く改善していくことが大切です。軌道に乗り始めたら、そこからさらに発展させていきましょう」。この積み重ねが、やがて大きな成果を生み出します。

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