新たなフロンティアモデルが登場するたびに、終末論的な議論が繰り返されているように見えます。「ホワイトカラー職の終焉」と検索すれば、現代の仕事の終わりや、従業員と組織の関係性の崩壊についての議論があふれていることがわかります。
しかし、あまり語られていないものの、私がより建設的だと考えているのは、ナレッジワーカーにとっての新たな可能性です。
重要なビジネスプロセスを最もよく理解しているのは、現場の従業員です。経営層ではありません。IT部門でもありません。最先端のLLMでさえも対応できません。それらを担っているのは、ビジネスアナリストやRevOpsの専門家、サプライチェーンマネージャーや財務責任者、そして長年の経験で専門性を培ってきた従業員たちです。
企業が真にインテリジェントになるためには、AIワークフローの構築や展開において、これらの人材の関与が不可欠です。AIがビジネスを学び、真に理解するためには、彼らの導きが必要です。
では、この変化はどのように進むのでしょうか。また、組織はナレッジワーカーとともに、どのようにAIを実践的に運用していけばよいのでしょうか。見ていきましょう。
エンタープライズインテリジェンスに求められるもの
取締役会に財務データを説明し、具体的な施策を提案する場面を想像してください。しかし次の会議では、AIの計算ミスにより、その説明をすべて撤回することになります。
誤った結果を出すことほど、AI導入を失敗に導く要因はありません。信頼がなければ、システム全体が成り立ちません。
当社が実施した1,400人のビジネスおよびITリーダーを対象とした最近の調査では、90%以上の企業がAIを活用している一方で、意思決定にAIを信頼している企業はわずか28%でした。さらに、AIの試験運用から本番運用に移行できた企業は25%未満であり、信頼と運用化の間に強い相関があることが示されています。
インテリジェントエンタープライズとは、信頼できるAIが組織全体に組み込まれている企業のことです。
Alteryxでは、AIシステムの成果はVURAフレームワークに従うべきだと考えています。AIとその出力は、可視化可能(Visible)で、理解可能(Understandable)で、再現可能(Repeatable)で、監査可能(Auditable)でなければなりません。つまり、誰が同じ質問をAIに投げても同じ答えにたどり着ける必要があり、またAIを利用する人は、その答えに至ったプロセスを説明できなければなりません。
AIの運用責任は誰にあるのか
エンタープライズインテリジェンスとは、重要な業務プロセス全体に信頼できるAIを展開することですが、その責任はIT部門とナレッジワーカーのどちらにあるのでしょうか。
例えば、仕訳入力、収益認識、アクセス制御など、サーベンス・オクスリー法対応のプロセスにAIを導入したいと考えたとします。IT部門が新しいAIワークフローの構築を支援する前に、まずサーベンス・オクスリー法対応のプロセスを詳細に理解する必要があります。そのうえで、財務チームが信頼できるツールを開発しなければなりません。
確かに実現は可能です。しかし、その解決策の構築には膨大な時間がかかります。さらに新たな規制や企業買収が発生すると、システムはすぐに陳腐化してしまいます。そのたびにIT部門と連携して再調整する必要があります。
さらに、帳簿の不整合やコンプライアンス違反が発生した場合、その責任をIT部門が負うことは避けたいと考えています。このような理由から、AIシステムとワークフローの責任は、業務部門の担当者が担うべきです。AIの出力の正確性を担保できるのは、彼らだけです。また、AIのロジックを設計し、定義し、継続的に運用管理できるのも彼らだけです。
データは燃料。ビジネスロジックこそがAIを正しく導く
最後に、データの問題があります。「入力の質が低ければ、出力の質も低くなる」という言葉を、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。データ分析企業のCEOである私としては、信頼できるデータこそがAIの信頼性の鍵だと言うと思われるかもしれません。
もちろんそれは重要ですが、それだけでは十分ではありません。
企業内のデータをクラウドプラットフォームに集約することは、非常に有効です。データは容易にアクセス可能になります。チームや業務全体で、一貫した信頼できるデータ基盤を構築できます。しかし、LLM (大規模言語モデル)にそのままデータを解釈させて、複雑な業務プロセスを理解させることはできません。
繰り返しになりますが、これらの重要な業務プロセスを理解している人材が、LLMが適切なデータを適切な方法で解釈できるように導く必要があります。それによって、AIは可視化され、理解可能で、再現可能で、監査可能なものになります。クリーンで信頼できるデータは必要です。しかしそれ以上に、そのデータに基づくビジネスロジックが必要であり、それを生み出せるのはナレッジワーカーだけです。
エンタープライズインテリジェンスの5つの柱
エンタープライズインテリジェンスは、次の5つの柱に支えられています。
- 信頼性と透明性のあるデータ
- 主体的に活躍するビジネスアナリスト
- 経営層全体での責任共有
- 部門横断的なコラボレーション
- AIとともに進化するリーダーシップ
各柱はすべて、同じ中核となる考え方を強化しています。AIは、信頼できるデータに基づき、実際のビジネスの専門知識によって形づくられ、経営層のオーナーシップに支えられ、日々の業務を改善するために活用されて初めて価値を発揮します。
身近にあるインテリジェンスを活用する
インテリジェントエンタープライズの構築を目指すビジネスリーダーにとって、まず自らに問いかけるべき最も重要な問いは、重要な業務プロセスにおけるAIの運用に関するものです。AIの出力を信頼するためには、何が必要でしょうか?AIを活用したプロセスが、現在のプロセスより優れていると感じるためには、何が必要でしょうか?
その答えが見えたら、すぐに業務部門の担当者を巻き込んでください。彼らに責任と裁量を与えてください。AIに置き換えるのではなく、彼らの知見を活用してください。ナレッジワーカーが専門性を活かして、AIを強化し、設計し、統制できる環境を整えてください。彼らの業務に対する深い理解こそが、エンタープライズインテリジェンスを実現する鍵となります。