本田技研工業株式会社 (以下、Honda) では、同社の車両から取得した膨大な移動情報を収集・分析し、新しいサービスの創出と事業展開を目指しています。そんな膨大なデータを加工・分析するためのツールとして、同社はアルテリックス・ジャパンのセルフサービスデータ分析ツールである「Alteryx Designer」を導入しました。データサイエンティストのような専門的スキルを持った人材がいなくても、データを加工・分析することが可能になり、新しいビジネスの開発に貢献しています。
1948年に本田宗一郎氏が創業したHondaは、オートバイ、自動車、パワープロダクツ (耕うん機、除雪機、発電機など)、航空機を事業の柱とするモビリティメーカーです。近年は、これまで培ってきたモノづくりの技術力と世界に広がる市場基盤の強みを生かし、小型ジェット機「HondaJet」の製品化、二足歩行ロボットをはじめとするロボティクスの研究開発、エネルギー分野での新事業開発、といった新しい分野へも積極的に挑戦しています。
2017年には「すべての人に “生活の可能性が拡がる喜び” を提供する」という「2030年ビジョン」を策定し、従来からのモビリティ製品にエネルギー、ロボティクスなどの技術革新を融合する取り組みを加速させています。また、CASE (Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)、MaaS (Mobility as a Service) といった新たなモビリティトレンドに応えるために、ソリューションサービスの領域にも進出しようとしています。
そうしたソリューションサービスについて、既存のモビリティ製品とは異なる領域における新規ビジネスの企画・創出と事業化に向けた実証を担当しているのがビジネス開発部です。
「私たちがいま注力しているのは、大量のデータを可視化・分析して新しい価値を提供するサービスの事業化です。現在はHondaの車両から取得したプローブデータを個人が特定できないように匿名化したデータをベースに、法規や会員規約の範囲内でBtoBやBtoG向けデータ分析サービスの開発に取り組んでいます」(ビジネス開発部、杉本 佳昭氏)
本田技研工業株式会社
経営企画統括部 ビジネス開発部チーフ
本田技研工業株式会社
車両から取得したプローブデータを分析する新サービスを開発するにあたり、Honda ではいくつかの課題を抱えていました。 その一つは、人的リソースが限られているという課題です。
「ビジネスの種がうまく育つかどうか分からない段階、あるいは手探りで市場を開拓している段階では、お客様との打ち合わせ、分析要件の作り込みからデータの分析、レポートの作成まで、私たち自身が行う必要があります。この段階ではデータサイエンティストのような専門的スキルを持った人材を確保できないので、誰にでも使いこなせるツールが必要でした」(杉本氏)。
もう一つは、大量のデータの中から分析に利用するデータをいかに効率よく抽出するかという課題でした。
「データ分析には時系列の位置データを扱う必要がありますが、ExcelはもちろんBIツールでも、クラウド上のデータレイクに蓄積されている膨大なデータを処理しきれないという課題がありました」(杉本氏)。
これらの課題を解決する手段として、杉本氏らはAmazon Web Services (AWS) 上にデータ分析サービス基盤を構築し、Amazon Simple Storage Service (S3) のデータ分析を簡易化するクエリサービス「Amazon Athena」の導入を検討しました。
「クラウドSIベンダーのクラスメソッド株式会社に提案を依頼したところ、同社から紹介されたのがセルフサービスデータ分析ツール『Alteryx Designer』でした」(杉本氏)。
Honda が構築したデータ分析サービスの基盤は、データレイクから Amazon S3 へと Amazon Athena でデータをインポートし、そのデータを Alteryx Designer を使って抽出・ 加工して、BI ツールの「Tableau」でインサイトを可視化するというものです。
「Alteryx Designerの採用を決めたのは、クラスメソッド社の手厚いサポートが得られそうだったからです。Alteryx ACEの称号を持つ “じょんすみす”さんが在籍しています。実際に導入から運用まで、クラスメソッド社やAlteryxコミュニティからさまざまな支援を受けました」(杉本氏)。
杉本氏のチームは元々データ分析とは異なる分野でキャリアを積んできたため、Alteryx Designerの導入当初はクラスメソッド社が作成したワークフローがブラックボックスに見えたと言います。しかし、納品されたワークフローやAlteryx Designerに用意されているサンプルワークフローを1つ1つ読み解き、分析のアイディアを実現するために色々試してみることで理解が早まったそうです。
「最初の一歩を踏み出した後は、Alteryx Designer がいかに使いやすいツールであるかを思い知ることになりました。 比較対象がないため具体的な導入効果を表すのは難しいのですが、お客様との打ち合わせとデータ分析のサイクルを短期間で回すことができ、新しいデータ分析サービスの事業化に向けた取り組みが確実に前進しました。 言い換えると、 Alteryx Designer がなければこの企画はこれほど順調には進まなかったとさえ思っています」(杉本氏)
Alteryx Designer を利用し始めた効果もあり、データ分析サービスの事業化は着々と進行しています。 実績の一例として、「道の駅」の運営自治体や広告代理店などにプローブデータに基づく分析サービスを提供しました。
Alteryx Designerを扱うデータ分析担当者も増えました。船越允維氏がチームに加わり、データ分析業務を担当しています。
「私たちの目標は、データ分析サービスを通してすべての人に『生活の可能性が拡がる喜び』を提供することです。さらにAlteryx Designerを使いこなすとともに、より多くの方にサービスをお届けするためにデータベースやBIツールと連携できるAlteryx Designerの強みを活かして分析を効率化したいと考えています。また、サービスの拡大と増員に伴って、Alteryx Designerのライセンスも追加していく予定です。Alteryx Designerはデータ分析サービスでの利用にとどまらず、データを扱う様々な部門で活用できる可能性を秘めたツールだと思います」(船越氏)。
「Alteryx Designerを利用してデータ分析を行った結果は、交通渋滞の緩和、道路整備の計画、観光イベントの企画などさまざまな分野に役立ちます。Hondaが保有する膨大で質の高いプローブデータが社会に貢献し、人々の幸せにつながっていくことを期待しています。それを実現するためにも、今後もAlteryx Designerの機能・技術を積極的に活用し、Hondaのデータ分析サービスをさらに発展・進化させていきたいと考えています」(船越氏)。
本田技研工業株式会社
本田技研工業株式会社 ビジネス開発部
データアナリスト