ソニーグループ株式会社
グローバル経理センター
トランスフォーメーションデザイン部
統括部長
国内経理2部
統括部長(兼務)
林 尚史 氏
ソニーグループ株式会社
グローバル経理センター
トランスフォーメーションデザイン部
DX推進課
澤井 恵里 氏
ソニーグループにおいて、ソニーグループ(株)およびグループ会社の決算、税務、財務分析及び、グループの連結決算に関する経理業務、グループ各社に対する経理・税務に関する指導・助言を行う役割を担うグローバル経理センター。同センター内には、トランスフォーメーションデザイン部が設けられ、経理部門におけるテクノロジー活用推進、人材育成、組織開発をリードしています。さらに同部に設けられたDX推進課に属するFinance Automation事務局は、経理実務を行わないDX専門チームであり、Alteryxをはじめとしたツールを用いて経理業務の変革を推進しています。
グローバル経理センターでは、2016年にRPAによる経理業務の自動化を開始し、2023年にAlteryxの導入とともに、経理業務のプロセスをデータのインプットからアウトプットまでEnd to Endで一貫自動化を目指した「次世代Finance Automation構想」を展開。2024年からAlteryxによる本格的な効果創出を実現しています。
「経理業務の変革としてトランザクション処理のマニュアルワークから付加価値のある業務へのシフトを目指しており、経理・財務・税務の様々な業務において広くAlteryxを活用し、業務の効率と質を高めることを目指しています」(林氏)
グローバル経理センターにおいて、Alteryxの活用は3段階で発展してきました。はじめは「Alteryx Designer」による大量データの高速処理、次に「Alteryx Server」を用いた自動実行とオンデマンド実行、そして「SAP専用Connector」を使ったAlteryxとSAPの直接連携による一気通貫した自動化です。この業務自動化は、あるべき姿を描いて変革を実現する「BPRマインドセット」、社員一人ひとりが自らの業務改善を提案する「ボトムアップ」、案件管理の作法を遵守しながら自由に開発を促す「市民開発の促進」の3本の柱で取り組みが進められました。
「2023年7月からのAlteryx活用の結果、約2年で240本のワークフローがAlteryx Serverで常時実行され、100を超える業務改善を実現しました。業務削減効果は約5,500時間/年に達し、グローバル経理センター所属の約7割が内製ハンズオン研修を経験し、約30名が開発経験者となっています」(林氏)
Alteryxを活用する前提として、Alteryx ServerやSAP専用Connectorの導入といった環境整備には苦労が伴いました。経理社員で構成される組織ゆえにITの専門性があまり高くなかったこと、企業規模が大きくステークホルダーも多いため、進捗に時間を要し管理も煩雑でした。さらに海外ベンダーや海外在住のシステム保守部隊との英語でのコミュニケーションという言語的な壁も存在しました。
「これらの課題は、地道に目の前のやるべきことを明確にして根気よく対処する、分からないことは臆せず人に聞き人を巻き込む、ステークホルダーのフォローアップを怠らずに時には別ルートで働きかけるといった泥臭いアクションを通じて乗り越えていきました」(澤井氏)
DXに対する現場社員の理解を醸成するため、啓発活動はフェーズに分けて継続的に取り組んでいます。最初は、いきなりツール導入に飛びつかず、DXリテラシーを向上するセミナーやワークショップを開催し、グローバル経理センターにおけるDXの定義や目指す姿など「DXに対する土台づくりと共通理解の醸成」を約1年かけて丁寧に進めました。2023年は、Alteryxを核とした「次世代Finance Automation構想」を明示し、その目的や実現したい姿、具体的な事例やメリットを、グローバル経理センターの各部署を巡回し共有していきました。そのうえで2024年からは、内製のハンズオン研修や事例共有会を通じてAlteryxの機能や活用シーンに対する理解深化を推進しています。ハンズオン研修では参加者が実際に手を動かすことでAlteryxのツール理解とスキル習得を後押しし、事例共有会ではAlteryxの活用事例を組織全体に広く共有することで「じぶんごと化」を促進。この両輪を回すことで業務改善を加速・実現していきます。
「市民開発者の発掘にあたっては、DXへの興味やこれまでの活動を通じてセンスある人を“狙い撃ち”で特定しました。またハンズオン研修という“底上げ”を通じてDXに対する関心の種まきを行い、有望な人材を探します。この“狙い撃ち”と“底上げ”を循環させることで人材の発掘と育成を実現しています」(澤井氏)
市民開発者には多彩な人材が揃った「CoE(Center of Excellence)」が伴走し、個別質問会やチャットグループでのサポートを提供することでスキル習得下の苦しい時期を一緒に乗り越える支援もしています。
さらに、グローバル経理センターにおけるDX推進で大事にしていることは、マネジメントが率先垂範することです。センター長が事例共有会に毎回欠かさず参加しコメントするほか、部課長がハンズオン研修に参加するなど、マネジメント自らが行動で示し、役割や業務調整を通じて、社員が安心して日々の業務改善に取り組める環境を整えています。加えて、ハンズオンへの参加や業務改善の実績は個人評価に反映させ、貢献が正当に報われる仕組みを整備しています。これらのさまざまな施策が実行されたことで、グローバル経理センターにおけるAlteryxによるDX推進は一過性のものではなく、継続的な取り組みになっています。
「我々がDXに取り組み始めて2年ほど、まだまだ変革の途上です。マネジメント、CoE、社員が一丸となってDXへ挑戦する社員をサポートしながら、Alteryxを活用した業務改革を推進し、これからも新たな価値の創出に向かっていきたいと考えています」(林氏)
※ソニーグループは、パーパスとして「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」を掲げ、6つの事業「G&NS(Game and Network Services)」「Music」「Pictures」「ET&S(Entertainment Technology and Services)」「I&SS(Imaging and Sensing Solutions)」「Financial Services」を展開しています(2025年7月時点)。