ソニーグループ株式会社
グローバル経理センター
センター長
石川 博之 氏
ソニーグループは、パーパスとして「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」を掲げ、6つの事業「G&NS(Game and Network Services)」「Music」「Pictures」「ET&S(Entertainment Technology and Services)」「I&SS(Imaging and Sensing Solutions)」「Financial Services」を展開しています。グローバル経理センターは、ソニーグループ(株)およびグループ会社の決算、税務、財務分析及び、グループの連結決算に関する経理業務、グループ各社に対する経理・税務に関する指導・助言を行う役割を担い、「多様な専門人材とテクノロジーの力で経営に貢献するプロフェッショナル集団になる」というミッションのもと、高い専門性を活かした経営への貢献と、人材・組織の持続的な成長に基づき“日本一”の経理組織の実現を目指しています。
経理を取り巻く現場では、VUCA時代とも呼ばれる予測不能な事業環境の激しい変化に直面しており、従来の守備範囲を超えて複雑かつ高度な経営課題に対応することが求められています。グローバル経理センター センター長の石川 博之氏は「これまでもAIの普及により簿記や会計などの仕事がなくなると語られていましたが、2023年の生成AIの爆発的な普及以降、経理業務の在り方そのものが根本的に見直される時代に入っています」と、近年のテクノロジーの急速な変化への対応の重要性を強調しています。
これらの潮流をチャンスと捉え、グローバル経理センターでは ”DX or DIE”をスローガンにDXを生き残りの鍵と位置づけ、「GA-DX(Global Accounting – Digital Transformation)」を定義し、単なる業務のデジタル改善にとどまらず、組織そのものの変革を目指す“ソニーグループ流のDX”に取り組んでいます。
「経理として新たな価値を生み出すためのマインドセット変革を目指しています。外部コンサルタントやIT部門に任せるのではなく、経理・税務の専門性と経験を持った社員自身が本業の一環としてDXに取り組むことを推進しています」(石川氏)
グローバル経理センターのDXは2016年のRPA導入から始まり、2022年にはDX推進を行う「トランスフォーメーションデザイン部 DX推進課」を設置しました。2023年7月よりAlteryxを導入し、経理におけるマニュアル業務を抜本的に変革する「次世代Finance Automation構想」を開始。2024年にはAlteryx Serverの本格運用と内製トレーニングを行い、2025年にはグローバル・国内関係会社でのAlteryx展開を開始するとともに、Alteryx-SAP直接連携を開始しました。
Alteryx導入前には、Excelによる手作業の多さやヒューマンエラー、月末・月初の決算繁忙期における業務負荷、既存の自動化ツールによる改善の限界といった課題が生じていたと言います。これらの課題を解決するためにAlteryxを導入し、データの入手からアウトプットまでをEnd to Endで全自動化・高速処理することを目指しました。
「経理現場社員による市民開発を奨励、内製ハンズオン研修には当センター社員の約7割が参加し、現在では、240本のワークフローが常時稼働、100を超える業務において約5,500時間/年の削減効果を創出しています」(石川氏)
Alteryxのユースケースとしては、会計・経理や税務の広範な業務でみられ、前者では決算時の各種残高照合、異常値チェックや財務諸表の増減分析。後者では税務申告作業の効率化・正確性の向上を目的として税務申告書類の作成などを実施。近年、経理としても対応が求められるESG開示に伴うGHGデータ等の集計にも活用するなど多岐にわたります。
「Alteryxの導入により、Excelの更新漏れや誤操作がなくなり、ミス防止とガバナンスの向上が実現しました。データ準備や資料作成の時間が減り、分析に集中できるようになったほか、大量データの比較・検証も容易になりました。ワークフローの構築の過程で業務プロセスの見直しや見落とされていた誤処理の発見、ブラックボックス化の解消も進み、繰り返し作業が減ったことで社員の心理的な余裕も生まれました」(石川氏)
グローバル経理センターの組織変革の本質は、事業環境やテクノロジーの変化を恐れず、経理・会計・税務の専門性に最新のテクノロジーを掛け合わせて新たな価値を創出できる人材を持続的に創出できる組織に変わっていくことにあります。これを実現するためには「キャズム(溝)」を乗り越え、組織全体および社員一人ひとりが積極的にテクノロジー活用に取り組むと同時に、DXを組織文化に昇華させることが不可欠です。
「アクションとしては、4つあります。一つ目は、あるべき組織像を中長期視点で描きつつ、短期的に明確なKPIと施策を設定することで、変革に向けた確かな道筋をつけることです。二つ目は、マネジメント自身が率先して現場を支え取り組む姿勢が不可欠です。三つ目は、個人任せにせず、CoE(Center of Excellence)チームを組成し、社員の困りごとに寄り添う仕組みを構築・運用することです。四つ目は、未来を見据え、データアナリティクス・生成AIなどのアップスキリング機会の提供によって、人材育成を同時に進めています」(石川氏)
グローバル経理センターでは、これらの施策を通じて社員のチャレンジと成果を引き出す好循環を生み出し、社員一人ひとりの意識を少しずつ変え、組織変革の歩みを進めています。
※ソニーグループは、パーパスとして「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」を掲げ、6つの事業「G&NS(Game and Network Services)」「Music」「Pictures」「ET&S(Entertainment Technology and Services)」「I&SS(Imaging and Sensing Solutions)」「Financial Services」を展開しています(2025年7月時点)。