分析の民主化に成功すれば、組織に計り知れないほどのメリットがもたらされるようになります。
しかし、McKinsey 社の調査によると、 そのような取り組みの成功率は 30% 未満に過ぎませんでした。また、Everest Group 社による他の調査では、DX(デジタルトランスフォーメーション)施策の 78% が失敗に終わっていることが明らかになっています。
残念なことに、多くの企業がこのような取り組みをうまく推進できずにいます。
この成功率の低さは、何が原因なのでしょうか。
- 経営陣の賛同が得られない
- 人材でなく、テクノロジーにばかり目を向けがちな戦略
- リソースやスキルが不足している
しかし、ひとたび分析の民主化や DX への取り組みが軌道に乗れば、計り知れないほどの価値がもたらされるようになります。McKinsey 社によると、自動化などの分野に早期に投資した企業は、総株主利益率(TRS)が同等の企業と比較して約 74% 増加しています(47%~27%)。
分析の民主化によって価値を得るためには、どのような分野に力を入れるべきなのでしょうか?
その答えは、まず人から取り組むことです。
人材が分析の民主化戦略の成功を左右する理由
Harvard Business Review では、分析の民主化における課題を 2 つの点に集約しています。
- 目標について上層部間で意見が一致しておらず、その解決に向けた議論もなされていない
- 試験運用や拡張に必要なデジタル技術の理想と現実の間にギャップがある
民主化においてテクノロジーが重要な役割を果たすことは間違いありませんが、テクノロジーばかりに目が行き、人材へのサポートがおろそかになると、根深い問題が発生する可能性があります。
Forbes が DX 施策が失敗する理由を、業界の有識者にヒアリングしたところ、次のような点が挙げられました。
- 変化を嫌う従業員の抵抗
- プロジェクトの目標におけるミスコミュニケーション
- ユーザーへの期待値や目標が明確化されていない
- チームの目的意識が低い
- 適切なスキルが不足している
つまり、明確な目標があっても、不十分な技術しか使えないチームでは、分析に対するモチベーションが下がり、目的意識を持たないチームでは、適切な技術を使っても、不毛な結果しか得られないでしょう。
全員の足並みを揃えるには効果的な戦略の策定と実施が不可欠です。
データの民主化の戦略についてチームの認識を統一する
分析の民主化や DX の取り組みが失敗する理由の 1 つは、力を注ぐ方向を間違えていることです。
McKinsey の調査では、68% の回答者がデジタル変革の最も一般的な目的として、 組織の運用モデルのデジタル化を挙げています。
しかし、運用モデルがデジタル化されたからといって、ただちに何かが改善されるわけではなく、従業員の業務が楽になるわけではありません。同じ回答者のうち 7% が、自社の取り組みは成功したが「持続しなかった」と回答しているのは、おそらくこのことが原因でしょう。
チームの足並みを揃えるには、まず焦点を絞った質問から始めましょう。チームが解決しようとしている問題を深く掘り下げてみてください。質問に対する答えの多くは既に知っていることかもしれませんが、調査を通して、これまで見逃していた新たな気づきが得られるかもしれません。
質問の例:
- 現在のデータプロセスに不満を感じている点は何ですか?
- データを扱う時間が最も長い業務は?
- どのような分析ツールやリソースを新たに導入したいですか?
- データや分析の課題で、解決することで最も恩恵を受けられそうなものは何ですか?
- 新たにどんなデータプロジェクトを推進すべきだと思いますか?そのようなデータプロジェクトに関わりたいと思いますか?
これらの質問は、以下の 2 点の実践に役立ちます。(1) 組織の最大の弱点を理解し、(2) その弱点に対処する価値を実証するデータを提供する。
インパクトの大きい問題を解決する価値
大きな取り組みを成功に導くためには、まずは小さな取り組みから始めてみることが一般的です。しかし、小さく始めることは、インパクトを捨てることではありません。時間のかかるプロジェクトをたった 1 つ解決するだけでも、大きなインパクトを得られるようになります。
Slalom 社は、レポートの問題を解決し、自動プロセスによって5 か月かかっていた作業を、わずか 5 分で完了できるようになりました。
Siemens Energy 社では、30 分間のプロセスに関する問題を解決したことにより、データの民主化戦略が促進され、わずか 6 か月で 350 件ものユースケースが生まれました。さらに 200 件のユースケースも進行中です。
この 2 社はいずれも、1 つの問題を解決しただけです。1 つは時間のかかるレポートであり、もう 1 つは 30 分間の反復可能なプロセスでした。どちらも、分析の民主化に向けた壮大なプランに組み込まれるようなものではありませんが、変革を促し、有意義な結果を残しています。
小さく始めるということは、組織に影響を与える共通の問題点に焦点を当て、それに対処するための計画を立てることです。
次のヒントを参考に、より影響の大きいプロジェクトを特定して解決してみましょう。
- 時間のかかるプロジェクトを探す:1 日 30 分でも短縮すれば、1 人あたり年間 130 時間以上もの時間を節約できます。10 人のチーム全員が同じ問題を抱えている場合、1 つのプロジェクトを変革すれば 1,300 時間以上もの時間を節約できます。
- 結果を特定する:顧客の購買行動を理解する、What-If 分析の精度を高めるなど、どのような結果を得たいか思い描いてみましょう。組織全体での連携を強化する、経営陣の支持を得るなど、その他の目標も含めてください。こうすることで、どんなデータが必要かを容易に把握できるようになるでしょう。
- スケールアップに向けた計画:この時点で、拡張性の高いプラットフォームを探し始めてみても良いでしょう。戦略を立て、IT 部門をはじめ、さまざまな部門から意見を集めましょう。その計画は、問題の解決と、望ましい結果への到達に役立つものですか?それにより、組織全体に利益がもたらされるようになりますか?
調査結果を活用して、できるだけ多くの項目を反映したまとまりのある計画を立てるように心がけます。シンプルに、しかし成長を見据えた計画を立てましょう。次に、民主化に向けた組織の戦略と、自身の計画を整合させていきます。
効果的な分析の民主化戦略を作成する方法
情報を収集したら、予算内で望ましい結果が得られるかどうかを確認します。この時点で、適切なテクノロジーを探し始めてみましょう。
その際、今ある成果に応じて、あるいは規模を拡張した際に、どのようなことができる技術であるべきかを検討します。
- 望む結果をすべて達成: これには、誰もがいつでも分析を活用できるなどの目標が含まれます。アナリスト、データサイエンティスト、ビジネスユーザーIT スタッフなど、あらゆるデータワーカーが対象となります。
- データの民主化:データのサイロを解決し、必要なデータを見つけやすくし、分析プロセスのあらゆる資産を共有できるようにします。
- 柔軟な拡張:プロジェクトを開始して成功した場合、そのテクノロジーは組織の成長に応じてさらなるサポートを提供してくれますか?規模の拡張に数年かかったりしませんか?逆に、規模を縮小しなければならない場合はどうでしょうか?
これらの点を念頭に置きながら、戦略の整合性を取り、問題を解決し、結果を出し、データの民主化に向けて取り組みましょう。その道のりは険しいものになるかもしれませんが、導入規模を拡張し、成功率 30% のメンバーの仲間入りを果たすために、その都度戦略を練り、乗り切っていきましょう。
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