AGC株式会社は1907年に創立し、日本で初めて板ガラスの工業生産に成功しました。時代とともに事業領域を広げ、現在ではガラス、電子、化学、ライフサイエンス、セラミックスなど幅広い分野に素材を提供しています。「化学品カンパニー」は、1917年に板ガラスの原料であるソーダ灰の自給からスタートした歴史のある事業部です。AGCが全社的にDX化に取り組む一環として、同カンパニーではデータを活用するためにAlteryxを導入。ビジネスを変革し、優位性を確保するために欠かせないツールとして活用しています。
全社的に掲げられたDX化。化学品カンパニーのスマート化推進室では、スマート化戦略の策定から、企画・立案、技術・技能の確立までワンストップで取り組むことをミッションとしました。
「DX化は単なるデジタル化ではありません。ビジネスを変革させ、優位性を確保するために、どのようにデータを活用すればよいかを常に意識して取り組んでいます」(本庄氏) 本庄氏は、続けて「スマート化は“見える化” “ わかる化” “ 変わる化”という3つのステップで進めています」と語ります。1stステップは、データを活用できる形で収集・蓄積し、データを見えるようにして課題を発見する“見える化”。2ndステップは、見えるようになったデータを分析し、課題を明確化する“わかる化”。そして3rdステップは、データから得られた洞察を実務に落とし込み活用し、変化を促す“変わる化”です。
「製造業が扱うデータは大量にあります。例えば我々化学品カンパニーであれば、基礎化学品、機能化学品、そしてライフサイエンスと非常に幅広い製品を取り扱っています。さらに、製品各々が、開発・製造・販売の要素に分解され、それぞれにデータが伴い、さらにインプットとアウトプットが常に変わるのです。このような特性がある製造業で持続的にDXやスマート化を推進するには、データの収集や分析、解析が手軽に、かつ、スピーディーにできる必要がありました」(石井氏)
「導入直後は大変さもありましたが、個人差はあるものの1~2週間で使いこなせるようになりました。プログラミングを最初から学ぶよりも圧倒的に早くデータエンジニアリングの基礎を習得できたと考えています。学習にあたってはオンラインで提供されている豊富なウェビナーやマニュアル、Q&Aが参考になりました。実際に使用するなかで出てくる技術的な課題もありましたが、アルテリックス社のオンラインサポートを受けることで、すぐに解決できました」(安井氏)
AGCでは現在、Alteryxを活用して、データの収集・分析、業務プロセスの改善、機械学習などに取り組んでいます。例えば、2019年から始動した情報収集システム「CHAMP(チャンプ)」では、データ収集の効率化・高度化を進めるとともに、収集したデータの“見える化”による問題解決・価値創造を目指しています。この開発においてもAlteryxは必要不可だったと、安井氏は語りました。
Alteryx導入は、開発期間の短縮や開発費用の削減をはじめ、さまざまな効果をもたらしています。 「CHAMPではデータを活用して、課題を自ら解決することを目指して取り組んでいます。従来、収集したデータの加工集計や整理は、システムエンジニアの力を借りないと実現できない領域でしたが、Alteryxを導入することでほしいデータを得るための加工集計やその連続処理さえも、自ら構築できるようになり、また開発期間が短縮されました。ある活用事例で試算をしたところ、システム構築を外部に委託した場合のコストに比べ、Alteryxを活用することで開発費用を80%以上削減できることがわかりました」(安井氏) 「導入効果はコストだけではなく、モチベーションやリテラシーにも大きな変化があった」と石井氏は語ります。
以前は、データの提供を受けても、分析結果のフィードバックに1~2カ月ほどかかっていましたが、Alteryx導入後は、わずか数日で何らかのフィードバックできるようになりました。課題を抱えている部門にとっては、自分たちが提供したデータがどのように活用されているのかが、すぐにわかるというメリットがあります。データを提供する価値が実感できるようになり、データ収集、提供、活用に対するモチベーションが上がりました。
Alteryxはユーザーインターフェースが優れているので、処理画面を実際に提示しながら、分析内容の共有が簡単にできます。目的とする分析ができない場合でも、何が不足しているのかがすぐにわかります。Alteryxの画面を見て、自分たちが知りたいデータを得るために次に何をしたらよいかに気が付くようになるなど、データ活用に対するリテラシーが上がっています。 石井氏は、「我々のようなスマート化の企画部門とユーザー部門とが共通の認識をもちながら、DXやスマート化に取り組めるようになってきた」と感じているそうです。
Alteryx導入の意義について、本庄氏は、「これまで、データは一部の専門家だけが扱えるものでしたが、Alteryxにより誰でも扱えるようになりました。限られた人財でスピード感をもってビジネスを変革するためには、組織が一丸となってデータと向き合う必要があります。Alteryxという武器をもったことで、理想とする組織像に近づいていると考えています」と語ります。
続けて、安井氏は「Alteryxのおかげで、組織内のデータリテラシーが上がり、プログラミング的な思考も身に付いてきています。最近では、私たちのスキルが上がったことで外部のITエンジニアの方々との会話も充実したものになり、以前と比べより価値のあるものを実現できる土壌ができてきていると感じます」と語りました。
今後の展望について、「現在AGCでは、運転一括管理システム「CHOPIN(ショパン)」や、工場へのプライベートLTEネットワークの導入など、さまざまなデータを一元的に収集するシステムの構築を進めています。Alteryxをデータパイプラインとして機能させ、これらのシステムに蓄積したデータの集約・分析をすることで、新たな価値創造につながる発見が得られることを期待しています」と話す安井氏に続き、石井氏、本庄氏も以下のように語りました。
「他部門でもAlteryxに興味をもつ人が増えています。わざわざAlteryxのことを説明しなくても、DXやスマート化を議論する際に我々の解析結果を見せるだけでAlteryxに興味をもってもらえます。Alteryxを通してDXを推進する仲間が増えていくことを感じています」(石井氏) 「製造業はサプライチェーンでつながっていて、一社が独り勝ちすればよい、という世界ではありません。製造業にAlteryxユーザーが増え、切磋琢磨することで、日本全体の製造業がパワーアップできるといいですね。そういう世界を創るために、アルテリックス社には、ぜひ、ユーザー同士がつながれる仕組みのバックアップをしていただきたいです」(本庄氏)
AGC株式会社
本社:東京都千代田区丸の内1-5-1創立:1907年(明治40年)
設立:1950年(昭和25年)
代表者:代表取締役 兼 社長執行役員 平井 良典 氏
事業内容:1907年に創業したAGCは、板ガラスの工業生産からはじまり、現在では「ガラス」「電子」「化学」「セラミックス」など、多様な分野において事業を展開している。
2018年に社名を旭硝子からAGCに変更し、グループで共有するブランドステートメント”Your Dreams, Our Challenge”も策定。優良素材メーカーとしてのグローバルブランド再構築を進めている。